湧き上がった疑問

今日放送された某授業系番組で、ニンゲンの消費する仮想水、いわゆるバーチャルウォーターについての解説があった。なんでも我々の食べるものを生産するために使った仮想水は、朝食だけでも何百リットルという量の水が使われているということであった。そして、我々日本人は、外国から食料品を媒介として、大量の仮想水を輸入しており、「無駄遣い」しているから、なんとかして水を節約していこう、という論理が番組内で展開されていた。
数年前の高校受験の総合問題で、仮想水についての総合問題を出題されたときにも同じことを思ったのだが、これはすごい暴論であるなと感じた。我々が食べるものに対して、「無駄遣い」という物の言い方もどうかと思うが、それはさておき、仮想水という都合のいい考え方を利用して、無駄に一般市民の恐怖を煽っているように思ったからだ。
仮想水というのは、文字通り仮想的な概念である。仮想水が何リットル使われていたとしても、やはり作物は作物であって、輸出入に際して移動する実質的な水の量は、その作物に含まれる水分量でしかないし、水は循環する資源であるのだから、石油のように使った分すべてが消えてなくなるわけではない。蒸発して雨になる水や、地下に染み込んで湧き出る水だってあるのだから、「我々の食事にxリットルの仮想水が使われているのだ!」といったところで実質の水に関しては何も述べていない。むしろ仮想水という言葉を使うことによって、実質的な水資源について見えにくくなっているような気がする。
それに、この仮想水の話題の冒頭に、世界的な「飲み水」の不足を取り上げていたが、これも「仮想水」と「飲み水」を錯誤させて、本来飲み水でない水で栽培された作物まで、あたかも飲み水で栽培されて日本へ輸出されたかのように思わせている用に感じ、非常に作為的なものを感じた。ゲストの講師の方は「別のところで節約するのが重要」とも言っていたので、彼自身としてはそういうつもりはないのだろうか、編集のマジックでそういう風に見えてしまっている。番組が「こんな大事な水資源を大量に使った物をがんがん輸入して食べてる日本人は悪者である」という結論を導き出すように悪意ある作り方をしているように私は感じてしまった。
確かに、水資源に関する問題は世界的に深刻になっているのは事実だし、私もそれに関しては否定するつもりもないけれど、今日の某授業の放送を見て何かが違うと思った。私は、今日の放送内容を信じていいのだろうか、それとも、今日感じたその違和感を信じて、何か別の方法で真実を調べる必要があるのだろうか。